皆さんのなかにも、街のケータイショップや家電量販店で賑わいを見せているスマホコーナーに、1度は足を踏み入れた経験があるはずです。
今、本記事を書いている筆者は、20代前半から約6年、ドコモショップの店員として勤めた経験があります。
そこで分かった携帯ショップの特徴の1つが·····
「携帯ショップは喜怒哀楽がこれでもかと交差する空間」ということ。
- 新しいスマホってどんなのが出ているかなー?(ワクワク)
- アンケートに答えただけで、洗剤貰えるんだ(このあとタブレット売られそうになりげんなり)
- 画面が割れた·····(助けて‥LINEのデータとか画像とか)
- おい!スマホの電池がすぐ切れるんだけど(げきおこ)
上記のような様々な感情が渦巻くのがケータイショップなのです。
そこで本記事では「接客したことを大後悔したモンスター客シリーズ」と題してお送りします。
記念すべき1回目は‥
「パズドラデータ消滅男」
タイトルからしてロクな内容ではないことを、お察しいただけるでしょうか。
今思い返しても「あれは人の形をした、妖怪人間だったのでは」とにわかに信じられない思い出です。
それではどうぞ。
言ってやるぞ、やってやるぞ
筆者:「いらっしゃいませー」
営業スマイルで筆者が迎えたその男
扉付近の発券機の前で仁王立ちしながら、こちらをじっと見据えて動きません。
この時点で勘のいい筆者は、「あ、多分関わったらヤバイ奴だ」と悟ります。
「やってやるぞ、言ってやるぞ、絶対に」
クレーム特有のおぞましいオーラが全開なのです。
ショップ店員をしていると何となくわかるんですよね。
これから何が起こるかが。
男は開口一番に言い放ちます。
案の定である。
筆者:「はい?」
いきなりの先制攻撃にたじろぎ、思わず発してしまった。
※パズドラとは、パズルとRPGの要素をシンクロさせた大人気ゲームアプリ。
球体型のパズルを解きながら、モンスターを倒して、ダンジョンを攻略していきます。
その白熱ぶりは、国民的アイドルグループ「嵐」がCM出演するなど、一時期はアプリ界の頂点に君臨していたほど。
男は失意と怒りが入り交じった表情で繰り返します。
だったら消えたデータを元に戻せよ!
あまりにも突拍子過ぎて唖然とする筆者を前に、男の毛穴からは今にも湯気が出そうです。
筆者:(なんでそんなキレてるんだよ‥パズドラのことなんて知らないよ‥)
と、言い返すことができれば良いのですが、悲しいかなお仕事ですから無下にはできません。
舞台は受付カウンターへ
まずは彼の怒りを鎮静化するべく、穏やかな物言いで席に誘導する筆者。
筆者:「具体的な状況をおうかがいしてもよろしいでしょうか?」
そしたら店員が不要なアプリを消せだの、起動中の機能をOFFにしろだの言ってきたんだわ。
そしたら症状が治るって言われたんだわ。
筆者:「そうですね、確かに画面のフリーズや電池がすぐ減ってしまう症状への対処法としては、今おっしゃった方法を推奨してます」
だけど、気が付いたら他のアプリと一緒にパズドラ消えてたんだわ!!
この時点で疑問が2つ。
- 語尾が基本的に「だわ」で統一されている。
- 自分でアンインストールした可能性大(それしか考えられない)
1のクセ強めの語尾については、心にそっと閉まっておきます。
問題は2のセルフでのアンインストール疑惑をどう理解させようか。
筆者:「アプリケーションが勝手に消えることは今まで聞いた経験がありません。失礼ですが、アプリを消している流れで、パズドラも消してしまった可能性が高いと思うのですが‥」
俺は消したつもりはない!
ドコモのスマホなんだから責任もてよ!
いくら課金したと思ってるんだよ!
筆者:(いや、あんたの課金額とか知らんがな‥。とりあえず、注意事項の説明をするか‥)
筆者:「お気持ちは分かるのですが、ドコモでもお客様自身が入れたアプリケーションについては責任を負い兼ねます。申し訳ありません」
分かってるんですよ?
このようなモンスターに、通り一遍倒のマニュアルを伝えたところで効果が薄いのは。
ポケモンに例えると、水タイプのカメックス相手に『水てっぽう』を繰り返すようなもの。
言わずもがな「こうかはいまひとつのようだ」
つまりノーダメージに等しいです。
筆者:「再度アプリケーションを入れ直しましたか?恐らくログインIDやパスワードを入力すれば元に戻るはずなんですか‥」
筆者:(うん知っているよ、どうせ覚えてないって言うのは分かってたけれど一応聞いてみたんだよ‥)
で、できねえよ·····。
もうめちゃくちゃだな、この暴走機関車をどうやって止めるべきか。
むむむ、、
理屈破壊
筆者:「申し訳ありませんが、それは不可能です。お客様のパスワードをドコモで管理しているわけではないですし、パズドラはドコモのアプリではないので対処方法がないのです」
筆者:「詳しいことは分かりかねますが、パズドラの運営元へトラブルが起こった時の対処方法などを問い合わせするページはありませんか?」
パズドラを連呼している自分が、妙に恥ずかしくなってきます。
え!なんで?
理屈破壊にも程がある!もう嫌だ!
筆者:(さすがにきついな‥久々の強敵。戦闘力が高すぎてスカウターがクラッシュしそう‥)
筆者:「お客様それはできかねます。注意事項に書いてあるとおり、一般のアプリケーションについては責任をかねると記載もあります。どうにかしてIDとパスワードを思い出してもらうしかないです。」
彼の座る場所が「落とし穴」と化すボタンがあれば今すぐに押したい‥。
筆者:「返金もできかねます。申し訳ありません。」
ここまで生産性のない会話も珍しい。
筆者:(やった!帰ってくれる!しかも解約するって言ってるから二度と来ないんだ!)
彼はそう怒鳴ると、二度と同じパズドラのデータは戻らないであろうスマホを片手に、勢いよく退店。
「クソがっ!」の捨て台詞のオマケ付き。
筆者:(彼をここまで暴君にさせるパズドラも恐ろしいな‥)
爽やか5人組の嵐も、まさかパズドラが原因でこんな理不尽な思いを被ったショップ店員がいることなど、夢にも思わないだろう。
なんにせよ、このエピソードのおかけで”パズドラ”の名前を耳にする度に、今でも般若のような彼の顔を思い出すのです。